千葉県いすみ市に住んでいます。2017年夏に埼玉県入間市から引っ越しました。外房と呼ばれるエリアにあって太平洋に面しているいすみ市は移住者の受け入れに積極的で、僕も「移住ですか?」と聞かれることが多いのだけど、スタンスとしてはあくまでも「引っ越し」です。ただ言葉の問題ではなく、考え方の問題です。
引っ越しにあたっては地の利がまったくなかったので、市がやっている移住サロンのようなものに顔を出しました。そこでチラチラと見聞した感じでは、移住とは新しい場所で新しい仕事を探す・作るなどして、暮らし向きそのものを大きく変えることのようです。
僕の場合はもともとが根なし草のフリーランスで、いすみ市に住むようになっても仕事そのものはまったく変わりません。住む場所が変わるだけ、ということは引っ越しと言っていいんじゃないか、と思います。例えば入間市から隣の所沢市へと住む場所を変えたとしても、それは引っ越しであって移住ではありません。僕にとっていすみ市に移ることは、それと同程度なのです。
「移住」という言葉には、住む場所も仕事も変えて心機一転新天地で頑張る、といった重さがあります。僕としては、なるべく軽く動きたかった。実際問題としては入間の分譲マンションを売却していすみに戸建てを建てるという重い事業を執り行ったのですが、気持ちのうえではできるだけ軽く、軽く考えるように心がけていました。
新しく住むいすみ市という場所に、過度な期待をしたくはなかったのです。下見を含めて何度もいすみ市を訪れ、とても気に入っていたのは確かですが、「ここから新しい人生を始めるぞ」といった具合に大げさに気合いを入れたくはなかった。というのは、新しい場所が100点満点ということはまずあり得なくて、必ず良し悪しがあるだろうと思っていたからです。
あまりに前のめりになっていては、ちょっとした小石でもつまづいてしまう。過度に期待して住み始めると、些細なマイナスポイントでさえ、ものすごく重大な欠陥のように感じかねない。できるだけニュートラルに、良いも悪いもあまり騒ぎ立てずに、スッと新しい土地に馴染めればいいな、と思っていました。
もちろん、もといた入間市から160km離れた土地にわざわざ動こうというのですから、いすみ市にそれなりの魅力を感じていたのは確かです。でも、それはかなり何気ないものだったし、いすみでの暮らしを長く続けるためにもオープニングはできるだけ静かな方がいいだろう、と判断しました。最初に山場を作ってしまうと、あとは下るだけ。でも、低空飛行から始めれば、上昇していく余地があります。
いすみ市に住むようになって半年が経った今、移住ではなく引っ越しだとこだわってきたことは、まずまず正解だったかな、と思っています。そんな風にのんびりと構えていられるのも、差し当たって仕事を変えずに済んでいるからかもしれません。
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