「北風と太陽」の話が好きだ。そして自分が誰かと向き合う時、北風ではなく太陽のようでありたいと願っていた。
それはなかなかうまく行かず、つい北風のようにあたることもあるのだが……。いずれにしても僕はいつも旅人の側ではなく、北風か太陽の側にいた。
でも、今日の僕は旅人だった。そしていくつもの太陽によって照らされた。僕はコートを脱ぎ捨てながら、自分の心の弱い部分まで見せてしまおうとしていることに気付いた。
北風が冷たく吹き付けていれば、僕はコートの襟を立て、心の殻を固く閉ざすことができる。北風を呪い、毒づきながら、自分を守ることができる。
でも、太陽には敵わない。大きな光で柔らかく温められてしまえば、僕は自分のすべてを外気にさらけ出すしかない。光の下に、ぬくもりの中に。それはとても怖いことだ。
僕は少し、疲れているのかもしれない。
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